ESLintでTypeScriptのコーディング規約チェックを自動化しよう
本章では、ESLintを使って、TypeScriptをチェックするためのノウハウをチュートリアル形式で学びます。
本章で学べること
本章では次のことを学んでいただきます。
- コーディング規約の必要性とコーディング規約の問題点
- ESLintでJavaScriptやTypeScriptをチェックする方法
- ESLintのルールの設定のしかた
- Airbnbのコーディング規約をESLintで活用する術
- エラーを解消する方法
- チェックを部分的に無効化する方法
- VS CodeやJetBrains IDEとESLintを統合する方法
チュートリアルをやり終えると、ご自身のプロジェクトにESLintを導入できるようになったりと、実務で役立つ基本的なスキルが身につくはずです。
本章の流れと読み進め方
本章は次の3部構成です。
本章の前半は座学です。「コーディング規約」や「リンター」が何か知らない方向けに、その背景知識を解説します(背景知識)。すでにコーディング規約やリンターが分かっている方、すぐに手を動かしたい方は、ここは読み飛ばしても構いません。
本章の後半はチュートリアルです。本章のゴールは、TypeScriptをESLintでチェックできるようになることです。しかしながら、ESLintでTypeScriptを扱うのは発展的な用法です。そこで、チュートリアルの流れとしては、まず基礎編として、JavaScriptをESLintで扱う方法を学びます(ESLintでJavaScriptをリントしよう)。その後、TypeScriptをESLintを扱う方法を学んでいただきます(ESLintでTypeScriptをリントしよう)。
章末にはおまけとして次のチュートリアルも用意してあります。関心と余力がある方はこちらもご覧ください。
このチュートリアルに必要なもの
このチュートリアルで必要なものは次のとおりです。
- Node.js v16以上
- NPM v7系以上
- Yarn v1系 (このチュートリアルはv1.22.18で動作確認しています)
Node.jsの導入については、開発環境の準備をご覧ください。
パッケージ管理ツールとしてYarnを利用します。最初にインストールをしておきましょう。すでにインストール済みの方はここのステップはスキップして大丈夫です。
shell
npm install -g yarn
shell
npm install -g yarn
背景知識
TypeScriptの書き方はさまざま
TypeScriptに限らず、プログラミング言語には文法があります。文法を守って書かれたコードは、エラーなく実行やコンパイルができます。
プログラムは文法さえ守れば、誰が書いても一字一句同じコードになるかというと、そうではありません。たとえば、TypeScriptでは文末のセミコロンが省略できます。次の2行のコードの違いは、セミコロンの有無です。どちらも文法的に正しく、どちらを使うかは好みの問題です。
ts
console .log ("OK")console .log ("OK");
ts
console .log ("OK")console .log ("OK");
文字列はシングルクォート、ダブルクォート、バッククォートの3とおりで書けます。シングルクォートとダブルクォートは機能上の違いがありません。バッククォートはテンプレートリテラルと言い、文字列リテラルとは仕様が異なります。しかし、次の例のような単純な文字列では、この3つは同じ意味になります。
ts
console .log ('OK');console .log ("OK");console .log (`OK`);
ts
console .log ('OK');console .log ("OK");console .log (`OK`);
この例は、どれを使うか意見が割れるところです。本書独自の調査では、「原則的にどれをもっとも多く使うか?」という問いに対し、シングルクォートが55%ともっとも多く、次にダブルクォートが29%、バッククォートは16%という回答が得られました。(回答数232件)
上でとりあげた例はほんの一例です。意味が同じで書き方が異なる例は、数多くあります。
書き方の違いが問題になることも
書き方の違いが問題なることがあります。たとえば、プログラムを共同で開発する場合です。人によって書き方が異なると、その違いが気になったり驚いたりして、コードの本筋が頭に入ってこないことがあります。インデントの幅が統一されていないと、コードが読みにくくなることもあります。結果的に、書き方に違いがあるとプログラムの保守性を損ねる一因になります。
コーディング規約で書き方を統一
理想は、誰が書いても同じコードになることです。そのためにはどうしたらよいでしょうか。解決策のひとつは、書き方のルールを決めることです。コードの書き方の取り決めは「コーディング規約(coding standards)」と呼ばれます。
コーディング規約では、たとえば、次のようなことを決めます。
- 変数名はキャメルケースにしましょう。
function
の中カッコは関数名と同じ行に書きましょう。(次の行に置いてはなりません)console.log
は消しましょう。- if文の条件式で変数代入してはいけません。たとえば
if (data = getData())
はだめ。
このようなルールを取りまとめて規約を作るのですが、実用的な規約に仕上げるにはかなりの労力を要します。実務では、公開されている規約を借りてくるほうが現実的です。
公開されている規約には主に次のものがあります。これらは実際に多くのプロジェクトで利用されています。
コーディング規約をチームのみんなで守れば、書き方を統一しやすくなります。
コーディング規約の問題点
コーディング規約にも問題点があります。
運用の手間は少なくない
開発者ひとりひとりが規約を守れば、コーディング規約は機能します。しかし、ヒューマンエラーは起きるものです。規約を知った上で破る場合もありますが、多いのは知らずに破ってしまうことや、間違えてしまうことです。もしも、規約が守られなければ、規約は形式上のものになってしまいます。そうなると、書き方を統一するという目標は達成できなくなってしまいます。
ヒューマンエラーを防ぐには、コードが規約に準拠しているかを日々点検しなければなりません。しかし、これには多くの労力がかかります。もっと重要な仕事がある中で、点検を行うのは無理な場合もあるかもしれません。規約を正しく運用するには、多くの手間がかかるのです。
コミュニケーション上の心理的な負担が増す
コーディング規約は、何が正しく、何が間違いかを定めます。すると、明らかに誤りと判断できるコードが出てきます。他者が書いたコードの誤りを指摘する場面も出てきます。人の仕事の誤りを指摘するのは難しいものです。想像以上に心理的な負担になります。指摘する側は相手の心象を悪くしないよう、伝え方に苦慮します。指摘される側も、前向きに受け取れない場合もあります。相手との対人関係によっては、指摘することが遠慮される場合もあります。
コーディング規約の自動化
書き方を統一するには、コーディング規約は不可欠です。しかし、運用の手間や心理的な課題もあります。これを解決する手助けとなるのがESLintです。ESLintは、JavaScriptやTypeScriptのコードがコーディング規約に準拠しているかをチェックするツールです。
ESLintは、コマンドひとつでチェックが行なえます。チェックは数秒で完了し、すぐに結果がわかります。そのため、点検の手間がほぼなくなります。
加えて、自動修正機能もあります。コードによっては、ESLintが規約に準じたコードに直せる場合もあります。この機能を利用できる場合は、規約違反箇所を修正する手間もなくせます。
不思議なもので、同じ指摘でも人に言われるより、機械に指摘されたほうが気が楽なものです。ESLintでは機械的に問題を指摘してくれるため、コミュニケーション上の心理的負担も軽減できます。
ESLintを導入すると、開発者は規約の運用や心理的ストレスから開放され、開発などのより重要な仕事に集中できるようになります。
学びをシェアする
📝TypeScriptは同じ意味処理でも異なる書き方が可能
💥チーム開発では書き方の違いが問題になることも…
🤝書き方統一のためにコーディング規約を導入しよう
😵でも、規約には運用の手間や心理的な課題もある
✅この課題はESLintで解決できる!
『サバイバルTypeScript』より
リンターとは
ESLintは一般的に「リンター(linter)」というジャンルのツールです。リンターは、プログラムを静的に解析し、バグや問題点を発見するツールを言います。リンターを使って、問題点を解析することを「リントする(lint)」と言います。
リント(lint)の由来は紡績です。羊毛や綿花から、繊維をつむぐ際に不要になるホコリのような糸くずをリントと呼びます。紡績ではリントを取り除く工程があり、これにちなんでプログラミングでもリントという名前が使われだしたと言われています。
コンパイラとリンターの違い
コンパイラの本質は、ある言語から別の言語に変換することです。TypeScriptコンパイラの場合は、TypeScriptからJavaScriptへの変換です。
リンターの本質は、プログラムの問題点を指摘することです。言語から言語への変換は行いません。
実際は、TypeScriptコンパイラもプログラムの問題点を報告します。たとえば、コンパイラオプションnoUnusedLocals
を有効にすると、未使用の変数をチェックできます。ESLintにもこれと同等のチェックがあります。こうした点はリンターの機能と重複する部分です。
類似のチェック機能があるものの、両者は得意分野が異なります。TypeScriptコンパイラは型のチェックが充実しています。型の側面から問題点を発見するのが得意です。一方、ESLintはインデントや命名規則などのコーディングスタイルや、どのようなコードを書くべきか避けるべきかの意思決定、セキュリティやパフォーマンスに関する分野でのチェックが充実しています。どちらも相互補完的な関係です。したがって、コンパイラとリンターの両方を導入すると、より幅広いチェックが行えるようになります。
TypeScriptコンパイラ | ESLint | |
---|---|---|
言語から言語への変換 | ○ | |
型のチェック | ○ | |
構文チェック | ○ | ○ |
コーディングスタイル | ○ | |
コードの意思決定 | ○ | |
セキュリティ | ○ | |
パフォーマンス | ○ |
学びをシェアする
🧵リンター:コードを静的解析し問題点を指摘するツール。ESLintはリンター。
🔀コンパイラ:静的解析もするが、別言語への変換が主目的。tscはコンパイラ。
⚖️tscとESLintの相違点
・tsc:型のチェックが得意
・ESLint:コーディング規約のチェックが得意
『サバイバルTypeScript』より
ESLintでJavaScriptをリントしよう
ここからはESLintの導入方法や使い方をチュートリアル形式で説明していきます。ぜひお手元の環境で実際にトライしてみてください。
プロジェクトを作成する
まず、このチュートリアルに使うプロジェクトを作成します。
shell
mkdir eslint-tutorialcd eslint-tutorial
shell
mkdir eslint-tutorialcd eslint-tutorial
プロジェクトルートにpackage.jsonを作ってください。その内容は次のようにします。
package.jsonjson
{"name": "eslint-tutorial","license": "UNLICENSED"}
package.jsonjson
{"name": "eslint-tutorial","license": "UNLICENSED"}
ESLintを導入する
ESLintはYarnでインストールしましょう。ESLintは開発時だけ使うパッケージなので、yarn add
コマンドには-D
オプションをつけてインストールします。
shell
yarn add -D 'eslint@^8'
shell
yarn add -D 'eslint@^8'
info
Next.jsは最初からESLintが導入されています。実務でNext.jsプロジェクトでESLintを使う場合は、導入ステップは省略できます。
ESLintが正しくインストールされたか、バージョンを表示して確認してください。
shell
npx eslint -vv8.15.0
shell
npx eslint -vv8.15.0
ちなみにこのnpx
コマンドは、Nodeモジュール(ライブラリ)の実行ファイルを起動するツールです。npx eslint
を実行すると、./node_modules/.bin/eslint
が実行されます。
ESLintの設定ファイルを作る
ESLintの設定ファイル.eslintrc.js
をプロジェクトルートに作ってください。
shell
touch .eslintrc.js
shell
touch .eslintrc.js
設定ファイル作成後のディレクトリ構造text
. ├── .eslintrc.js ├── node_modules ├── package.json └── yarn.lock
設定ファイル作成後のディレクトリ構造text
. ├── .eslintrc.js ├── node_modules ├── package.json └── yarn.lock
設定ファイルの内容は次のようにします。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},};
この設定内容は次で説明します。
root
eslint
コマンドを実行したディレクトリを起点に、ディレクトリをさかのぼって設定ファイルを探す仕様がESLintにはあります。たとえば、ディレクトリ/a/b/
でコマンドを実行した場合、ESLintは次の順で設定ファイルを探します。
/a/b/.eslintrc.js
/a/.eslintrc.js
/.eslintrc.js
この探索はルートディレクトリに達するまでさかのぼります。探索中に複数の設定ファイルが見つかった場合は、設定内容がマージされていきます。この仕様は便利な反面、プロジェクト外の設定ファイルまで見にいってしまう危険性もあります。設定ファイルの探索範囲をしぼるためにも、root
にtrue
を設定するのがお勧めです。これがある設定ファイルが見つかると、これ以上ディレクトリをさかのぼらなくなります。
env
env
はチェック対象のJavaScript/TypeScriptコードがどの実行環境で使われるかをESLintに伝えるためのオプションです。これを設定すると、ESLintがグローバル変数を認識するようになります。たとえば、browser: true
を設定すると、window
やalert
などのグローバル変数が認識されます。es2021
を設定すると、ES2021までに導入されたグローバル変数が認識されます。他にもnode
などの指定ができます。指定できる実行環境の一覧は公式ドキュメントをご覧ください。
この設定は、ESLintのno-undefルールに関係します。このルールは未定義の変数をチェックするルールです。グローバル変数は定義せずに利用できる変数です。ESLintはどのグローバル変数が定義済みかを知らないと、このルールを正しく適用できません。そのため、env
オプションは正しく設定する必要があります。
parserOptions
ecmaVersion
parserOptions
はチェック対象のJavaScriptがどの構文を使っているかをESLintに伝えるためのオプションです。ecmaVersion
は、どのバージョンのECMAScriptの構文を使うかを指定します。"latest"
を設定すると、最新のECMAScriptの構文を使うという指定になります。デフォルトではECMAScript 5になっています。これはかなり古いバージョンです。実務ではES5で開発することはまれなので、ここは必ず指定しましょう。なお、env
オプションでes2022
などECMAScriptのバージョンを指定している場合、ecmaVersion
にも自動的にes2022
が設定されます。どちらも同じバージョンを指定する場合は、ecmaVersion
の指定は省略できます。
sourceType
JavaScriptにはスクリプトモードとモジュールモードがあります。sourceType
はJavaScriptコードがどちらのモードで書かれるかを指定するオプションです。モジュールモードでは、import
文やexport
文といった追加の構文がサポートされます。sourceType
のデフォルト値は"script"
(スクリプトモード)です。実務で開発する場合は、モジュールモードでJavaScript/TypeScriptを書くほうが普通なので、sourceType
には"module"
(モジュールモード)を指定しましょう。
ESLintのルールを設定する
ESLintには「ルール(rule)」という概念があります。ルールはチェックの最小単位です。たとえば、ルールには次のようなものがあります。
no-console
:console.log
を書いてはならないcamelcase
: 変数名はキャメルケースにすることsemi
: 文末セミコロンは省略しない
ESLintには200を超えるルールがあります。全ルールのリストは公式ドキュメントにあります。
ESLintでは、複数のルールを組み合わせてコーディング規約を組み立てていきます。
ルールには、重大度(severity)という重み付けが設定できます。重大度は、off
、warn
とerror
の3種類です。off
はルールを無効化し、チェックを行わなくする設定です。warn
は発見した問題を警告として報告します。報告はするものの、eslint
コマンドの終了コードには影響しません。error
は発見した問題をエラーとして報告し、終了コードを1にする効果があります。それぞれの重大度は、0
から2
までの数値で設定することもできます。
重大度 | 数値 | 効果 |
---|---|---|
off | 0 | ルールをオフにする |
warn | 1 | 警告するが終了コードに影響しない |
error | 2 | 警告し、終了コードを1にする |
ルールは.eslintrc.js
のrules
フィールドに、ルール名: 重大度
のキーバリュー形式で書きます。まずは、no-console
をルールに追加してみましょう。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},rules : {"no-console": "error",},};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},rules : {"no-console": "error",},};
ルールによっては、細かく設定できるものもあります。たとえば、camelcase
です。これは変数名がキャメルケースかをチェックするルールです。変数の種類によっては、キャメルケース以外が使いたい場合があります。たとえば、プロパティ名はアンダースコアを使いたいことがあるかもしれません。ウェブAPIによっては、JSONオブジェクトがスネークケース(foo_bar
のようなアンダースコア区切り)を採用している場合があるからです。この場合、ルール名: [重大度, 設定値]
のような配列形式で設定することで、細かいルール設定ができます。次の設定例は、プロパティ名に限ってはキャメルケースを強制しない設定です。試しに、この設定を.eslintrc.js
に加えてみましょう。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},rules : {"no-console": "error",camelcase : ["error", {properties : "never" }],},};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},rules : {"no-console": "error",camelcase : ["error", {properties : "never" }],},};
ここまでのふりかえり
- package.jsonを作りました。
- eslintをインストールしました。
- 設定ファイル
.eslintrc.js
を作りました。 - 設定ファイルには次のルールを追加しました。
no-console
:console.log
をコードに残しておいてはいけない。camelcase
: 変数名はキャメルケースにすること(プロパティ名を除く)。
JavaScriptをチェックする
設定ファイルが準備できたので、JavaScriptファイルを作り、ESLintでチェックしてみましょう。
まず、src
ディレクトリを作ってください。
shell
mkdir src
shell
mkdir src
src
ディレクトリにJavaScriptファイルhelloWorld.js
を作ってください。
shell
touch src/helloWorld.js
shell
touch src/helloWorld.js
helloWorld.js
が加わったディレクトリ構造が、次のようになっているか確認してください。
txt
. ├── .eslintrc.js ├── node_modules ├── package.json ├── src │ └── helloWorld.js └── yarn.lock
txt
. ├── .eslintrc.js ├── node_modules ├── package.json ├── src │ └── helloWorld.js └── yarn.lock
helloWorld.js
の内容は次のようにします。
src/helloWorld.jsjs
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
src/helloWorld.jsjs
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
このhelloWorld.js
は、わざとコーディング規約に違反するコードになっています。1行目の変数hello_world
はキャメルケースになっていません。2行目では、使ってはいけないconsole.log
が使われています。
では、ESLintでチェックを実行してみましょう。チェックは、eslint
コマンドを起動するだけです。eslint
コマンドは第一引数に、チェック対象のファイル名やディレクトリ名を指定します。ここでは、src
ディレクトリ全体をチェックするために、引数はsrc
にします。
srcディレクトリをESLintでチェックするshell
npx eslint src
srcディレクトリをESLintでチェックするshell
npx eslint src
これを実行すると、次の出力が表示されます。
結果の読み方
チェックした結果、問題点が見つかると表形式で詳細が表示されます。各行は4つの列からなります。左から順に、コードの行番号列番号、重大度、問題点の説明、ルール名です。
結果に表示されている内容だけでは、どうして問題点になっているのか、どう直したらいいのかが分からないことがあります。その場合は、ルール名からESLintのドキュメントでルールの詳細を調べます。たとえば、上の結果ではルール名にno-console
が挙がっていますが、この文字列をもとにルールの詳細を探します。no-console
の詳細ページは、https://eslint.org/docs/rules/no-consoleにあります。
コードを修正してエラーを解消する
src/helloWorld.jsjs
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
src/helloWorld.jsjs
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
上のコードをESLintでチェックした結果、2つの問題点が指摘されました。
- 1行目: 変数名
hello_world
がキャメルケースではない - 2行目:
console.log
は使ってはいけない
このエラーを解消したいので、helloWorld.js
を編集してみましょう。変数名hello_world
はhelloWorld
に変更します。2行目のconsole.log
は削除しましょう。修正後のコードは次のようになります。
src/helloWorld.jsjs
export consthelloWorld = "Hello World";
src/helloWorld.jsjs
export consthelloWorld = "Hello World";
再びESLintでチェックして、もう問題がなくなっているか確認してみましょう。
shell
npx eslint src
shell
npx eslint src
この実行結果に何も出力されなければ、問題点が解消されています。
コードを自動修正する
ESLintのルールの中には、コードの自動修正ができるものがあります。たとえば、semi
は、文末セミコロンをつけるつけないを定めるルールですが、これは自動修正に対応しています。ここでは、semi
を使ってESLintの自動修正をためしてみましょう。
まず、設定ファイル.eslintrc.js
のrules
にsemi
を追加します。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},rules : {"no-console": "error",camelcase : ["error", {properties : "never" }],semi : ["error", "always"],},};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},rules : {"no-console": "error",camelcase : ["error", {properties : "never" }],semi : ["error", "always"],},};
このルール設定では、"always"
を指定しています。これは、文末セミコロンを必須にする設定です。
つぎに、src/helloWorld.js
のコードのセミコロンを消して保存してください。
src/helloWorld.jsjs
export consthelloWorld = "Hello World"
src/helloWorld.jsjs
export consthelloWorld = "Hello World"
自動修正の前にチェックだけを実行し、semi
についての問題が報告されるか確認します。
shell
npx eslint src
shell
npx eslint src
次のような結果が表示されれば、追加したsemi
ルールが効いていることになります。
ESLintでコードを自動修正するには、eslint
コマンドに--fix
オプションをつけます。次のコマンドを実行し、自動修正してみましょう。
shell
npx eslint src --fix
shell
npx eslint src --fix
自動修正が成功していれば、出力は何も表示されずに処理が終了します。自動修正が効いているかを確認するために、src/helloWorld.js
を開いてみてください。文末にセミコロンが追加されているでしょうか。追加されていれば自動修正成功です。
ここまでのふりかえり
src/helloWorld.js
を作りました。npx eslint src
を実行し、src
ディレクトリをチェックしてみました。- コードを手直しして、ESLintのチェックを通過する流れを体験しました。(
camelcase
,no-console
) npx eslint src --fix
を実行し、ESLintの自動修正機能を試しました。(semi
)
ESLintにはどんなルールがある?
ここまでのチュートリアルでは3つのルールを扱いました(camelcase
、no-console
、semi
)。ESLintにはもっと多くのルールがあります。ルール数は200を超えます。
ルールの一覧は、公式ドキュメントのRulesにあります。この一覧では、どのルールが自動修正に対応しているかも確認できます。
Shareable configを導入する
ESLintのルールは数があまりにも多いため、ルールをひとつひとつ調べて導入していくのは大変です。そこで、お勧めなのがshareable configの活用です。
shareable configは、誰かが設定したルールのプリセットです。これを導入すると、自分でルールを設定する手間が省けます。
有名なshareable configのひとつに、ESLint公式が公開しているeslint:recommended
があります。これを導入すると、Rulesの一覧でチェックマークがついているルールが一括して有効化されます。これは公式が提供してるため有名ですが、有効になっているルールが少ないため、実務では物足りなさがあるかもしれません。
第三者が公開しているshareable configもあり、次にあげるものは実務でも広く使われています。
上のshareable configはコーディング規約に基づいて作成されているため、文書としてのコーディング規約とESLintの設定をセットでプロジェクトに導入できる利点があります。
このチュートリアルでは、人気のAirbnbのものを使っていきます。Airbnbの設定には、eslint-config-airbnbとeslint-config-airbnb-baseの2つがあります。前者は、React向けの設定が追加で盛り込まれています。今回はReactは扱わないので、よりシンプルな後者を導入します。
まず、Yarnでeslint-config-airbnb-base
をインストールします。その際、合わせてeslint-plugin-import
も導入します。
shell
yarn add -D \'eslint-config-airbnb-base@^15' \'eslint-plugin-import@^2'
shell
yarn add -D \'eslint-config-airbnb-base@^15' \'eslint-plugin-import@^2'
次に、設定ファイル.eslintrc.js
のrules
を消します。その上で、extends: ["airbnb-base"]
を追加してください。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},extends : ["airbnb-base"],};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},extends : ["airbnb-base"],};
これで、shareable configの導入は完了です。
チェックを試すために、src/helloWorld.js
を次の内容に置き換えてください。
src/helloWorld.jsjs
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
src/helloWorld.jsjs
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
このコードはAirbnbの規約にわざと違反する内容になっています。
最後にeslint
を実行し、チェックを動かしてみましょう。
shell
npx eslint src
shell
npx eslint src
すると、次のような結果が得られるはずです。
ここで報告されている問題点は、次のような内容になります。
import/prefer-default-export
: デフォルトエクスポートを使わければなりません。camelcase
: 変数hello_world
はキャメルケースでなければなりません。quotes
: 文字列リテラルはシングルクォートで囲む必要があります。no-console
:console.log
は残しておいてはいけません。
続いて、shareable configのルールを上書きする方法を学んでいきましょう。
上の結果では、import/prefer-default-export
違反が報告されていました。これは、名前付きエクスポート(export const helloWorld = "..."
)ではなく、デフォルトエクスポート(export default "..."
)にすべきというエラーです。しかし、ここでは名前付きエクスポートを使いたいので、このルールをオフにすることで警告されないようにしてみましょう。ルールを上書きするには、.eslintrc.js
のrules
に"import/prefer-default-export": "off"
を追加します。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},extends : ["airbnb-base"],rules : {"import/prefer-default-export": "off",},};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},extends : ["airbnb-base"],rules : {"import/prefer-default-export": "off",},};
さらに、文字列リテラルはダブルクォートのほうを使いたいので、rules
にquotes: ["error", "double"]
を追加します。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},extends : ["airbnb-base"],rules : {"import/prefer-default-export": "off",quotes : ["error", "double"],},};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",},extends : ["airbnb-base"],rules : {"import/prefer-default-export": "off",quotes : ["error", "double"],},};
再びeslint
を実行して、ルールの上書きが効いているか確認してみましょう。
shell
npx eslint src
shell
npx eslint src
次のように、出力結果からデフォルトエクスポートと文字列クォートについての警告が消えていれば、ルールが効いています。
ルールを部分的に無効化する
.eslintrc.js
で設定した規約はプロジェクト全体に及びます。コードを書いていると、どうしても規約を破らざるをえない部分が出てくることがあります。その場合は、コードのいち部分について、ルールを無効化することもできます。
部分的にルールを無効にするには、その行の前にコメントeslint-disable-next-line
を追加します。たとえば、次の例ように書いておくと、変数名hello_world
がキャメルケースでなくても、ESLintは警告を出さなくできます。
js
// eslint-disable-next-line camelcaseexport consthello_world = "Hello World";
js
// eslint-disable-next-line camelcaseexport consthello_world = "Hello World";
この方法はいざというときに知っておくとよいというものです。ルール無効化コメントだらけになってしまうと本末転倒です。節度を持って使うのが望ましいです。
ここまでのふりかえり
- shareable configの
eslint-config-airbnb-base
を導入しました。 - これのルールを一部上書きしてみました。
import/prefer-default-export
を無効化quotes
の指定をシングルクォートからダブルクォートに変更
- ルール無効化コメント
// eslint-disable-next-line
を試しました。
ESLintでTypeScriptをリントしよう
ここまでのチュートリアルでは、JavaScriptにESLintをかける方法を学んできました。ここからは、TypeScriptにESLintを使う方法を学んでいきます。
そもそもESLintでは、TypeScriptはチェックできません。これを補うのがTypeScript ESLintです。これを導入するとESLintでTypeScriptがチェックできるようになります。
プロジェクトを作成する
ここからは別のプロジェクトを作り、その新プロジェクトでチュートリアルを進めていきます。空のディレクトリを作り、その中に最低限のpackage.jsonを配置してください。
shell
mkdir eslint-typescript-tutorialcd eslint-typescript-tutorial/echo '{"name": "eslint-typescript-tutorial","license": "UNLICENSED"}' > package.json
shell
mkdir eslint-typescript-tutorialcd eslint-typescript-tutorial/echo '{"name": "eslint-typescript-tutorial","license": "UNLICENSED"}' > package.json
TypeScriptを導入する
TypeScript ESLintを使うには、TypeScript環境を構築しておく必要があります。まず、typescript
を導入しておいてください。合わせてNode.jsの型定義@types/node
もインストールしておきます。この型情報は、.eslintrc.js
などのNode.js環境で実行されるファイルをESLintでチェックするときに利用されます。
shell
yarn add -D 'typescript@^4.6' '@types/node@^16'
shell
yarn add -D 'typescript@^4.6' '@types/node@^16'
TypeScriptコンパイラの設定ファイルも作っておきます。
shell
touch tsconfig.json
shell
touch tsconfig.json
tsconfig.jsonの内容はこうします。
tsconfig.jsonjson
{"compilerOptions": {"outDir": "dist"},"include": ["src"]}
tsconfig.jsonjson
{"compilerOptions": {"outDir": "dist"},"include": ["src"]}
続いて、src
ディレクトリにTypeScriptファイルhelloWorld.ts
を追加します。内容は空で構いません。
shell
mkdir srctouch src/helloWorld.ts
shell
mkdir srctouch src/helloWorld.ts
コンパイルもできるか試してみましょう。
shell
npx tsc
shell
npx tsc
コンパイルが成功すると、dist/helloWorld.js
が生成されます。
この段階では、ディレクトリ構成が次のようになっているはずです。
ディレクトリ構成text
. ├── dist │ └── helloWorld.js ├── node_modules ├── package.json ├── src │ └── helloWorld.ts ├── tsconfig.json └── yarn.lock
ディレクトリ構成text
. ├── dist │ └── helloWorld.js ├── node_modules ├── package.json ├── src │ └── helloWorld.ts ├── tsconfig.json └── yarn.lock
TypeScript ESLintを導入する
ESLint本体とTypeScript ESLintの両方をインストールします。
shell
yarn add -D \'eslint@^8' \'@typescript-eslint/parser@^5' \'@typescript-eslint/eslint-plugin@^5'
shell
yarn add -D \'eslint@^8' \'@typescript-eslint/parser@^5' \'@typescript-eslint/eslint-plugin@^5'
TypeScript ESLintは2つのパッケージから成ります。@typescript-eslint/parser
は、ESLintにTypeScriptの構文を理解させるためのパッケージです。@typescript-eslint/eslint-plugin
は、TypeScript向けのルールを追加するパッケージです。
ESLintがインストールされ、実行可能になっているかバージョンを表示して確認しましょう。
shell
npx eslint -vv8.15.0
shell
npx eslint -vv8.15.0
TypeScript ESLintにはどんなルールがある?
ESLintの200以上のルールに加えて、TypeScript ESLintを導入すると、100以上のルールが追加されます。追加されるルールの一覧は、TypeScript ESLintのドキュメントで確認できます。
ここまでのふりかえり
- 新規プロジェクト
eslint-typescript-tutorial
を作成しました。 - TypeScriptをインストールし、
tsconfig.json
を設定しました。 - 中身が空の
src/helloWorld.ts
を作成し、コンパイルしてみました。 - ESLintとTypeScript ESLintをインストールしました。
TypeScript向けのshareable configを導入する
コーディング規約Airbnb JavaScript Style Guideに準拠したshareable configをインストールします。
shell
yarn add -D \'eslint-config-airbnb-base@^15' \'eslint-plugin-import@^2' \'eslint-config-airbnb-typescript@^17'
shell
yarn add -D \'eslint-config-airbnb-base@^15' \'eslint-plugin-import@^2' \'eslint-config-airbnb-typescript@^17'
eslint-config-airbnb-base
はJavaScript向けのshareable configです。これを上書きして、TypeScript ESLintのルールを追加したり、TypeScriptコンパイラがチェックするためESLintでチェックする必要がないルールを除外する設定を加えるのがeslint-config-airbnb-typescript
です。eslint-plugin-import
は依存関係上、導入が必要なパッケージです。
TypeScript ESLintの設定ファイルを作る
TypeScript ESLintを動かすためには、次の2つの設定ファイルを作る必要があります。
- tsconfig.eslint.json
- .eslintrc.js
これらファイルをプロジェクトルートに作成してください。
shell
touch tsconfig.eslint.json .eslintrc.js
shell
touch tsconfig.eslint.json .eslintrc.js
作成後のディレクトリ構造text
. ├── .eslintrc.js ├── dist │ └── helloWorld.js ├── node_modules ├── package.json ├── src │ └── helloWorld.ts ├── tsconfig.eslint.json ├── tsconfig.json └── yarn.lock
作成後のディレクトリ構造text
. ├── .eslintrc.js ├── dist │ └── helloWorld.js ├── node_modules ├── package.json ├── src │ └── helloWorld.ts ├── tsconfig.eslint.json ├── tsconfig.json └── yarn.lock
tsconfig.eslint.json
TypeScript ESLintは、チェック時に型情報を利用するために、TypeScriptコンパイラを使います。その際のコンパイラ設定をtsconfig.eslint.json
に書きます。コンパイラ設定は、tsconfig.json
の内容をextends
で継承しつつ、上書きが必要なところだけ記述していきます。
tsconfig.eslint.jsonjson
{"extends": "./tsconfig.json"}
tsconfig.eslint.jsonjson
{"extends": "./tsconfig.json"}
今回は、TypeScriptファイルに加えて、ESLintの設定ファイル.eslintrc.js
自体もESLintのチェック対象に含めたいので、allowJs
の追加とinclude
の上書きをします。
tsconfig.eslint.jsonjson
{"extends": "./tsconfig.json","compilerOptions": {"allowJs": true},"include": ["src", ".*.js"]}
tsconfig.eslint.jsonjson
{"extends": "./tsconfig.json","compilerOptions": {"allowJs": true},"include": ["src", ".*.js"]}
".*.js"
は、.eslintrc.js
などドット始まりのJSファイルにマッチするパターンです。パターンマッチにしておくことで、将来的に導入される他の設定ファイルもチェック対象に含めるようにできます。
また、テストフレームワーク「Jest」の設定ファイルでは、jest.config.js
のようにドットはじまりでないJSファイルもありえます。このようなファイルが追加されるのを見越して、"*.js"
もあらかじめ追加しておくとよいです。
tsconfig.eslint.jsonjson
{"extends": "./tsconfig.json","compilerOptions": {"allowJs": true},"include": ["src", ".*.js", "*.js"]}
tsconfig.eslint.jsonjson
{"extends": "./tsconfig.json","compilerOptions": {"allowJs": true},"include": ["src", ".*.js", "*.js"]}
このように、TypeScript ESLintでチェックする対象は、include
に追加していく必要があります。
tsconfig.eslint.json
が正しく設定されているか、次のコマンドを実行して出力を確認してください。
shell
npx tsc --showConfig --project tsconfig.eslint.json
shell
npx tsc --showConfig --project tsconfig.eslint.json
設定が正しいと、次のような出力になるはずです。
text
{ "compilerOptions": { "outDir": "./dist", "allowJs": true }, "files": [ "./src/helloWorld.ts", "./.eslintrc.js" ], "include": [ "src", ".*.js", "*.js" ] }
text
{ "compilerOptions": { "outDir": "./dist", "allowJs": true }, "files": [ "./src/helloWorld.ts", "./.eslintrc.js" ], "include": [ "src", ".*.js", "*.js" ] }
.eslintrc.js
次にESLintの設定ファイル.eslintrc.js
を作ります。内容は次のとおりにしてください。
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,parser : "@typescript-eslint/parser",plugins : ["@typescript-eslint"],env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",project : "./tsconfig.eslint.json",tsconfigRootDir :__dirname ,},ignorePatterns : ["dist"],extends : ["airbnb-base","airbnb-typescript/base","plugin:@typescript-eslint/recommended-requiring-type-checking",],rules : {"import/prefer-default-export": "off","@typescript-eslint/quotes": ["error", "double"],},};
.eslintrc.jsjs
module .exports = {root : true,parser : "@typescript-eslint/parser",plugins : ["@typescript-eslint"],env : {browser : true,es2021 : true,},parserOptions : {ecmaVersion : "latest",sourceType : "module",project : "./tsconfig.eslint.json",tsconfigRootDir :__dirname ,},ignorePatterns : ["dist"],extends : ["airbnb-base","airbnb-typescript/base","plugin:@typescript-eslint/recommended-requiring-type-checking",],rules : {"import/prefer-default-export": "off","@typescript-eslint/quotes": ["error", "double"],},};
root
、env
、parserOptions
のecmaVersion
とsourceType
については前のチュートリアルの解説をご覧ください。まだ説明していない、追加のオプションは次で説明します。
parser
js
module .exports = {// ...parser : "@typescript-eslint/parser",// ...};
js
module .exports = {// ...parser : "@typescript-eslint/parser",// ...};
parser
で設定したパーサーを使って、ESLintはJavaScriptやTypeScriptの構文を解析します。上の例では、TypeScriptパーサーを指定しています。この指定がないと、ESLintはTypeScriptを解釈できず、エラーが発生します。
TypeScriptはJavaScriptの構文を拡張した言語です。なので、このパーサーさえ入れておけば、TypeScriptに限らずJavaScriptのこのパーサーひとつで対応できます。要するに、このパーサーひとつで、TypeScriptとJavaScriptのファイルどちらもリントできるようになります。
plugins
js
module .exports = {// ...plugins : ["@typescript-eslint"],// ...};
js
module .exports = {// ...plugins : ["@typescript-eslint"],// ...};
ESLintは公式が提供するルールに加えて、第三者が作成したルールを使うこともできます。第三者が作成したルールはプラグインという形で公開されています。このplugins
フィールドにプラグインを追加すると、ルールが追加できます。上の例では、TypeScript ESLint独自のルールを追加するために、@typescript-eslint
を設定しています。
parserOptions
js
module .exports = {// ...parserOptions : {// ...project : "./tsconfig.eslint.json",tsconfigRootDir :__dirname ,},// ...};
js
module .exports = {// ...parserOptions : {// ...project : "./tsconfig.eslint.json",tsconfigRootDir :__dirname ,},// ...};
project
とtsconfigRootDir
はTypeScript ESLint独自のオプションです。tsconfigRootDir
はプロジェクトルートの絶対パスを指定します。project
、ESLint実行時に使うコンパイラ設定ファイルをtsconfigRootDir
からの相対パスで指定します。これらの設定は、TypeScript ESLintが型情報を参照するために必要な設定です。
ignorePatterns
js
module .exports = {// ...ignorePatterns : ["dist"],// ...};
js
module .exports = {// ...ignorePatterns : ["dist"],// ...};
ignorePatterns
はESLintのチェック対象外にするファイルやディレクトリを指定するオプションです。TypeScriptプロジェクトでは、コンパイルで生成されるJavaScriptは、リントしないのが普通です。なので、dist
ディレクトリをチェック対象外にしておきます。
extends
js
module .exports = {// ...extends : ["airbnb-base", // ①"airbnb-typescript/base", // ②"plugin:@typescript-eslint/recommended-requiring-type-checking", // ③],// ...};
js
module .exports = {// ...extends : ["airbnb-base", // ①"airbnb-typescript/base", // ②"plugin:@typescript-eslint/recommended-requiring-type-checking", // ③],// ...};
extends
はshareable configを使うための設定です。①は、JavaScript向けのルールです。これを拡張してTypeScript ESLintのルールにも範囲を広げたのが②です。①と②は上の順番でないと正しく設定されないので注意してください。
③はTypeScript ESLintが提供する推奨ルールセットで、型情報を要するルールを含みます。このルールセットでどのルールが有効になるかは、公式ドキュメントをご覧ください。
rules
js
module .exports = {// ...rules : {"import/prefer-default-export": "off","@typescript-eslint/quotes": ["error", "double"],},// ...};
js
module .exports = {// ...rules : {"import/prefer-default-export": "off","@typescript-eslint/quotes": ["error", "double"],},// ...};
ここのrules
は、shareable configで有効化されたルールを上書きするのに用いています。TypeScript ESLintで追加されたルールは、@typescript-eslint/
が接頭辞になります。
ここまでのふりかえり
- コーディング規約Airbnb JavaScript Style Guideに準拠したshareable configをインストールしました。
- TypeScript ESLintの設定ファイルを作りました。
- tsconfig.eslint.json
- .eslintrc.js
TypeScriptをチェックする
TypeScript ESLintを使う準備ができたので、いよいよTypeScriptをチェックしてみたいと思います。
まず、空だったsrc/helloWorld.ts
に次のコードを書いて保存してください。
src/helloWorld.tsts
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
src/helloWorld.tsts
export consthello_world = "Hello World";console .log (hello_world );
そうしたら、ESLintを実行してみましょう。
shell
npx eslint .
shell
npx eslint .
すると、次の結果が出力されるはずです。
2つの問題点が報告されています。1つ目は、変数名の命名規則が守られていない点についてのエラーです。2つ目は、console.log
が使われている点についての警告です。
これらの問題点を修正してみましょう。src/helloWorld.ts
を次の内容に変更し、保存してください。
src/helloWorld.tsts
export consthelloWorld = "Hello World";
src/helloWorld.tsts
export consthelloWorld = "Hello World";
再びESLintを実行して、問題点が解消されているか確認してみましょう。
shell
npx eslint .
shell
npx eslint .
出力結果に何も表示されていなければ、問題点が解決されています。
以上で、ESLintでTypeScriptをリントするチュートリアルは終わりです。
VS CodeとESLintを統合しよう
ここでは、Visual Studio Code(VS Code)に、ESLintを組み込む方法を説明します。
ESLintはコマンドひとつでコーディング規約をチェックできるようになり、それだけでも便利です。しかし、VS CodeとESLintを統合するとさらに便利になります。コードを書いているときに、リアルタイムで問題点のフィードバックが得られるようになるからです。
VS CodeとESLintを統合するには、ESLintの拡張をVisual Studio Codeのマーケットプレイスからインストールするだけです。
JetBrains IDEとESLintを統合しよう
ここでは、WebStormなどのJetBrains IDEに、ESLintを組み込む方法を説明します。
ESLintはコマンドひとつでコーディング規約をチェックできるようになり、それだけでも便利です。しかし、JetBrains IDEとESLintを統合するとさらに便利になります。コードを書いているときに、リアルタイムで問題点のフィードバックが得られるようになるからです。
WebStormは、ESLint統合機能がデフォルトで入っているので、プラグインなどをインストールする必要はありません。ESLintを有効にするには、「Preferences」を開き、検索に「eslint」と入力します(①)。絞り込まれたメニューから「ESLint」を開きます(②)。「Automatic ESLint configuration」にチェックを入れます(③)。最後に「OK」を押すと設定完了です(④)。